chapter1-5 世界政府

chapter1-5 世界政府

 この世界には一切の武器がない。

 と言ってもナイフや刀、弓などの原始的な武器は存在する。世界政府が製造を禁止している武器はピストルなどの機械的構造の武器類だ。機関銃、ライフル銃、ミサイル、戦車、戦闘機、そして核兵器も製造禁止だ。それらの武器が地球上に存在しないので、大規模な戦争は起こり得ないことに、一応はなる。攻撃するにも防御するにも武器が必要だが、そもそも武器がなければ攻撃はできないし防御する必要もないはずという理屈だ。

人類は長年に渡って武器を開発、生産して戦いを繰り返してきた。人類の歴史は戦いの歴史である。誰よりも強い武器を持つものが戦いを制してきた。そんな人類がどうやって一斉に武器を捨てることができたのか?

 西暦2200年、核保有国である全20か国が核兵器全廃条約にサインをするのと同時に核兵器永久不保持を宣言する。アメリカ、ロシア、中国、香港、台湾、フランス、イギリス、インド、パキスタン、北朝鮮、韓国、インドネシア、アフガニスタン、イスラエル、パレスチナ、イラン、イラク、サウジアラビア、南アフリカ、そして日本、計20か国。(香港は2030年に中国から独立)

 西暦2210年5月1日世界政府設立。地球上に国境が無くなる。(国境が無くなることに驚くかもしれないが、そもそも46億年の地球の歴史において国境があった時間なんてほんの一瞬だ)国という制度がなくなった代わりにブロック制度が新たに導入され、世界を8ブロックに分けた。ただ地方自治制度を禁止しているので各ブロックに自治政府のようなモノは無い。そのせいか自分がどのブロックに所属しているか意識している者はいない。ブロックは新しいアドレスに過ぎず、よってブロックとブロックの境界線は国どうしの領土問題を誘発するような国境とは違い地図上の線に過ぎない。

 1ブロックはアメリカ、カナダなど北米。2ブロックは中南米、南米。3ブロックはオセアニアと東南アジア、台湾、日本、インドなど。4ブロックはロシア、中国、朝鮮、韓国など北東アジア。5ブロックはパキスタン以西の中東。6ブロックはヨーロッパ諸国。7ブロックはアフリカ諸国。8ブロックは南極とその他。その他とはどこなのか詳細はわからない。

 世界政府初代代表の名前はディオール・D・ナ。この人物に関しては安全確保の観点から名前以外詳細なプロフィールは公開されていない。本人の顔すら公開されてなく名前も本名なのかさえわからない。ただ世界政府設立にあたって中心的役割を担っていたのは確からしい。噂ではイタリア出身の50歳代の男性のようだ。(この時代は性別の概念があまりない)